ギャラリー部 2023年入社 丸紅ギャラリーの学芸員として 展覧会の企画、準備、開催に携わる
大学4年生の時に学芸員の資格を取得し、卒業後は私立大学の博物館に勤めました。その任期が終わる頃に丸紅ギャラリーが私の専門である染織品の学芸員を募集していたことを知り、入社を決めました。
学芸員は求人数が少なく門戸が限られています。自分の専門分野でキャリアを開拓していくためには機を待つ必要がありますが、タイミングの面で非常に恵まれていました。
学芸員の業務は、丸紅が所蔵する文化財の情報整理と研究、修理方針の検討、所蔵品以外も含む作品の展覧会による文化財の公開です。
丸紅では年3、4回の展覧会があり、だいたい1年ほどかけて企画を準備します。展示品を海外から借りてくる場合はさらに時間がかかることもあり、そのための手続きを行ったり、借りている期間の作品の管理体制を整えたりすることも私たちの業務です。
展覧会の準備では、テーマを決め、来館する人にどのような印象を与えるかを考えます。また、作家や監修を依頼する大学の先生などの意見を汲み、来館者の動線、展示室の造作、展示ケースのレイアウトなどを考えていきます。
来館者に見えない業務では、作品の修理や研究も重要な業務です。例えば、染織品の修理は事前に作品本体の調査を行い、修理士の手によって表地と裏地を解体し、そこで見えてくる情報も踏まえて修理工房と意見交換し修理方針を考えていきます。また、そのような情報も含めて作品の研究も進めていきます。
ギャラリー運営は、社内やグループ内はもちろんのこと、監修者や外部の協力会社との連携が多いのが特徴です。展覧会の準備では図録制作や修理の会社と協業し、展覧会場の造作、プランニング会社とも細かく打ち合わせをします。私たちの頭の中にあるイメージを図面にし、形にしてもらうために、コミュニケーションのスキルを高めていく必要があります。
また、学芸員の資格ではフレキシビリティが重要な素養の1つとされています。展覧会の開催に向けたスケジュールはある程度決まっていますが、その過程では作品の状態や関係先との連携などで突発的な対応が必要になることがあります。その時々の状況にコミットしながら柔軟で迅速な対応によってプロジェクトを遂行していく力が求められます。
私たちは学芸員という一般企業の中でも特殊な職位に身をおいているため、協調性を持ってそれぞれが持つ専門的な知見、スキル、経験を周囲の人たちと共有することが大切です。また、丸紅ギャラリーは国公立の美術館などと違い、ギャラリー運営を通じて丸紅らしさを社会に発信していく必要があります。丸紅らしさにはいくつもの側面がありますが、グローバルな総合商社として丸紅コレクションや日本の美術品を世界に向けて発信していくことが役割の1つだと思います。
ギャラリー部は部長、総務担当、学芸員を含めて7名体制です。そのうち学芸員は3名で、それぞれが専門分野を持っているため、私が知らない情報や知識を吸収でき、見識を広められることを楽しく感じます。
少人数で展覧会を開くためには、お互いに声がけしながらプロフェッショナルとして力を合わせる必要があります。その点で、丸紅サービスはメンバー同士のコミュニケーションが良いのが特徴です。例えば、文化財は芸術的価値、歴史的価値が高い1点ものがほとんどで、気温20度前後、湿度50~60%で保管しなければなりません。そのことをファシリティマネジメント部と共有し、詳細な打ち合わせとチームワークによって万が一のミスも起こさない環境を構築しています。
学芸員やギャラリー運営の仕事は私にとっては趣味の延長線上でもあるため、オンとオフの境界線がほとんどないように感じています。休日は美術館や博物館に行くことが多く、科学博物館や動物園など美術とは直接的には関係しない場所にもよく足を運んでいます。作品を見ながら背景を考える時間が好きで、動物は作品のモチーフに使われることが多いため、形や動きを見ることが頭の整理になっていると感じます。
専門性を発揮し、臨機応変な対応ができる人が活躍できる職場だと思います。現時点で自分の専門性が何か迷っている人も、好奇心と仕事を楽しむ姿勢があれば、丸紅サービスでさまざまな業務を経験することによって、自分が気づいていなかったスキルや一面を発見し、キャリアの方向が見えてくるだろうと思います。